神奈川公立上位5校の偏差値と対策を横断比較──選抜比率で変わる合格ライン

神奈川公立上位5校の偏差値と選抜比率を横断比較する記事のアイキャッチ。高校受験指導アドバイザー・藤原 誠一が内申・当日点・特色検査の配分の違いを解説
答え神奈川公立上位5校(横浜翠嵐・多摩・光陵・横須賀・新城)の偏差値は74・67・66・66・60ですが、対策の中身を決めているのは偏差値ではなく選抜比率です。令和9年度選考基準の第1次選考は翠嵐3:7:3、多摩4:6:2、光陵4:6:1、横須賀3:7:1(英数国の内申2倍)、新城5:5。内申の比率が高い学校ほど、偏差値が下でも必要な内申は重くなります。

「翠嵐と多摩で、偏差値は7も違うのに、うちの子は内申がどちらも足りないと言われるんです」。教室長として保護者面談に立っていた18年間、上位校を複数比べているご家庭から繰り返し受けた質問です。

この違和感は正しいものです。神奈川県の公立高校入試は、内申・学力検査・特色検査をそれぞれ何対何で扱うかを学校ごとに決めています。偏差値は「どのくらいの学力層が集まるか」を示す数字であって、「何をどれだけ揃えれば受かるか」を示す数字ではありません。合格に必要なものの中身を決めているのは、偏差値ではなく選抜比率です。

この記事では、神奈川公立上位5校を令和9年度選考基準の同じ物差しで横に並べます。評定1つが当日点の何点分にあたるかまで換算したうえで、偏差値の順位と必要な内申の順位が一致しないという事実を、計算で確かめていきます。各校の詳しい対策は個別記事に譲り、ここでは5校を並べたときだけ見えるものを扱います。

この記事のサマリー

  • 5校の偏差値と選抜比率:横浜翠嵐74(3:7:3)・多摩67(4:6:2)・光陵66(4:6:1)・横須賀66(3:7:1+英数国2倍)・新城60(5:5・特色検査なし)
  • S値の満点が学校ごとに違う:翠嵐1300点・多摩1200点・光陵1100点・横須賀1100点・新城1000点。比率の合計がそのまま満点になります
  • 中3の評定1つの当日点換算:新城が約7.4点分、光陵と多摩が約4.9点分、横須賀の英数国が約4.8点分、翠嵐が約3.2点分。同じ評定5でも価値は2倍以上違います
  • 特色検査1点の当日点換算:翠嵐が約2.1点分、多摩が約1.7点分、光陵が約0.8点分、横須賀が約0.7点分。新城は特色検査を実施しません
  • 偏差値の順位と必要な内申の順位は一致しない:偏差値60の新城が求める内申は135点満点で120〜135。偏差値66の光陵の110前後より重くなります
  • 実質倍率は1.23倍から1.93倍まで開く:令和8年度入試は翠嵐1.93倍・多摩1.64倍・新城1.55倍・光陵1.34倍・横須賀1.23倍(県公表の受検者数と合格者数から算出)
  • 5校は対策の型で3つに分かれる:内申先行型(新城)・当日点勝負型(光陵・横須賀)・三変数型(翠嵐・多摩)。型が決まれば、時間配分と塾に求める機能が決まります
  • 5校すべてに教室網を持つ塾:臨海セミナーは旧学区でいう横浜東部・横浜中部・横須賀三浦・川崎北部・川崎南部のすべてに教室を置き、2026年入試で5校合計510名の合格者数を公表しています

神奈川公立上位5校の偏差値と選抜比率を一覧で比べる【2027年度入試データ】

神奈川公立上位5校の偏差値は横浜翠嵐74・多摩67・光陵66・横須賀66・新城60で、令和9年度選考基準の第1次選考の比率は翠嵐3:7:3、多摩4:6:2、光陵4:6:1、横須賀3:7:1、新城5:5です。同じ上位校でも、内申・学力検査・特色検査の配分は学校ごとにまったく違います。


5校の制度データを一枚の表にする

まず、比較の土台になる制度データを並べます。選抜比率と特色検査の有無は、神奈川県教育委員会が公表する令和9年度の選考基準(共通選抜・全日制)で全校分を確認したものです。

神奈川公立上位5校の制度データ(令和9年度選考基準)
学校志望校レベル偏差値第1次選考
内申:学力検査:特色検査
第2次選考特色検査S値満点
横浜翠嵐最難関公立743:7:38:2:2自己表現(比率3)1300点
多摩難関公立674:6:28:2:2自己表現(比率2)1200点
光陵難関公立664:6:18:2:1自己表現(比率1)1100点
横須賀中堅上位公立663:7:1
+英数国の内申2倍
8:2:1自己表現(比率1)1100点
新城中堅上位公立605:58:2実施なし1000点

表の右端に注目してください。S値の満点は学校ごとに違います。神奈川県の公立入試では、内申と学力検査の比率の合計が10になるように各校が設定し、特色検査を実施する場合はそこに1〜5の整数が加算されます。この合計に100を掛けた数が、その学校のS値満点です。翠嵐が1300点、新城が1000点というのは、そういう仕組みから出ています。

もうひとつ、第2次選考の列も見ておく価値があります。第2次選考は内申(評定)を使わず、学力検査と「主体的に学習に取り組む態度」で選考する枠です。特色検査を実施する4校のうち、第1次より第2次のほうが特色検査の比率が軽くなるのは翠嵐(3→2)だけで、多摩・光陵・横須賀は据え置きです。内申が届かなかった場合の挽回ルートでも、特色検査からは逃げられません。

なお、選抜比率と特色検査の実施形式は毎年の選考基準で更新されます。数字の根拠は神奈川県の選考基準および特色検査の概要のページで公開されているので、受験学年に入ったら該当年度のものを必ず自分で確認してください。


内申の目安は「135点満点」に単位をそろえて読む

合格に必要な内申は、135点満点で語られることも、中3の9教科合計の45点満点で語られることもあり、そのままでは学校間で比較できません。ここでは135点満点に単位をそろえます。神奈川県の調査書は「中2の9教科の評定合計+中3の9教科の評定合計×2」で135点満点になります。

5校の合格目安(内申は135点満点に統一)
学校内申の目安
(135点満点)
中3の9教科合計に換算当日点の目安
(500点満点)
横浜翠嵐126前後42前後450〜460
多摩126〜13542〜45400前後
光陵110前後37前後400以上
横須賀重点化のため別枠
(オール4+英数国5が目安)
─350〜400
新城120〜13540〜45350〜400

中3の9教科合計への換算は、中2と中3の評定水準が同程度である前提で計算しています。実際には中3で評定が上がるご家庭も下がるご家庭もあるので、目安として扱ってください。横須賀だけは英数国の評定を2倍に換算する重点化があるため、合計点での比較が成立しません。理由は次章で分解します。

内申点の計算方法そのもの(いつの成績が、どの式で135点になるか)を確認したい場合は、姉妹サイトの神奈川県の内申点の仕組みを解説した記事が詳しく整理しています。本記事は計算方法ではなく、その内申が学校ごとにどう重み付けされるかに絞って進めます。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

面談でいちばん混乱が起きるのが、この単位の問題でした。塾の資料は135点満点、学校の三者面談は「オール4なら36」という45点満点、模試の判定は独自の指標。同じ生徒の同じ成績が3通りの数字で語られるので、ご家庭は自分の子がどこにいるのか分からなくなります。私が面談で最初にしていたのは、志望校の話に入る前に数字の単位をそろえることでした。単位さえそろえば、あとは比率を掛けるだけで各校との距離が出ます。


同じ1点でも重さが違う──評定と特色検査を当日点に換算する

神奈川県の公立入試は内申・学力検査・特色検査をそれぞれ100点満点に換算して学校ごとの比率を掛けるため、評定1つや特色検査1点が当日点の何点分にあたるかを逆算できます。中3の評定1つは新城で約7.4点分、光陵と多摩で約4.9点分、翠嵐で約3.2点分。同じ評定5でも、学校が変われば価値は2倍以上違います。

換算の考え方

当日点1点は、S値では「100÷500×学力検査比率」の分だけ動く。中3の評定1つは調査書で2点分として扱われるため、S値では「2×100÷135×内申比率」の分だけ動く。この2つを割り算すると、評定1つが当日点の何点分かが出る。特色検査1点は「特色検査比率÷(100÷500×学力検査比率)」で求める。


中3の評定1つは当日点の何点分か

この式に5校の比率を入れると、次の値になります。数値は令和9年度選考基準に基づく試算です。

中3の評定1つを当日点に換算した比較(令和9年度選考基準に基づく試算)
学校内申:学力検査中3の評定1つ中2の評定1つ
新城5:5当日点 約7.4点分約3.7点分
多摩4:6当日点 約4.9点分約2.5点分
光陵4:6当日点 約4.9点分約2.5点分
横須賀(英数国)3:7+2倍重点化当日点 約4.8点分約2.4点分
横須賀(他6教科)3:7当日点 約2.4点分約1.2点分
横浜翠嵐3:7当日点 約3.2点分約1.6点分

新城の7.4点分と翠嵐の3.2点分の差が、この表のいちばん重要な情報です。評定を1つ上げる労力の対価が、学校によって2倍以上変わります。新城志望なら定期テストで評定4を5にする作業は当日点7点分の価値がありますが、翠嵐志望なら同じ作業が3点分にしかなりません。翠嵐志望者が定期テスト対策より入試演習に時間を寄せるのは、精神論ではなく、この計算に基づいた合理的な配分です。


特色検査の1点は当日点の何点分か

特色検査は自己表現検査として実施され、令和9年度はすべての学力向上進学重点校とエントリー校の県立高校で共通問題・共通選択問題が使われます。検査時間は60分です。同じ問題を解いていても、換算後の価値は学校ごとに違います。

特色検査1点を当日点に換算した比較(令和9年度選考基準に基づく試算)
学校特色検査の比率特色検査1点S値に占める特色検査の割合
横浜翠嵐3当日点 約2.1点分1300点中300点(約23%)
多摩2当日点 約1.7点分1200点中200点(約17%)
光陵1当日点 約0.8点分1100点中100点(約9%)
横須賀1当日点 約0.7点分1100点中100点(約9%)
新城─実施なし─

翠嵐と光陵では、特色検査1点の価値がおよそ2.6倍違います。同じ60分の検査に対して投じるべき準備時間が違うということです。比率1の光陵・横須賀では「形式に慣れて取りこぼさない」水準で足りますが、比率3の翠嵐ではS値の4分の1近くがここで動くため、専用の演習量が要ります。特色検査を実施しない新城は、その時間を5教科と9教科の内申にまるごと回せます。


横須賀だけは同じ物差しに乗らない──英数国2倍重点化

横須賀は調査書の英語・数学・国語の評定を2倍に換算する重点化を採用しており、県の選考基準でこの重点化を採るのは上位5校では横須賀だけです。調査書の満点は135点ではなく180点になり、内申の合計点だけを見ても選考上の評価が分かりません。

換算すると、英数国の評定1つは当日点約4.8点分、それ以外の6教科の評定1つは約2.4点分。同じ内申合計でも、英数国に5が集まっている生徒と実技教科で稼いでいる生徒とでは、横須賀の選考上の評価がまったく変わります。3:7という当日点重視の比率だけを見て「内申は軽い学校」と判断すると、英数国の重みを見落とします。

各校の内訳をさらに細かく見たい場合は、横浜翠嵐・多摩・光陵・横須賀・新城それぞれの記事で、学年別の対策まで分解しています。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

この換算表を面談で見せると、多くのご家庭が驚かれます。とくに新城志望のご家庭は「7.4点分」という数字を見て、副教科の評定を1つ上げる意味を初めて実感されることが多かった。逆に翠嵐志望のご家庭には、内申を1つ上げるために費やす週末より、特色検査の演習に回した週末のほうがS値を動かすと数字でお見せしていました。どちらが正しいという話ではありません。志望校が変われば、正しい時間の使い方も変わるというだけです。


偏差値の順位と、必要な内申の順位は一致しない

神奈川公立上位5校では、偏差値の高い順と、合格に必要な内申が重い順が一致しません。偏差値60の新城が求める内申は135点満点で120〜135、偏差値66の光陵は110前後で、6ポイント下の新城のほうが重い内申を求めます。この逆転を作っているのは選抜比率です。


偏差値60の新城が、偏差値66の光陵より高い内申を求める理由

新城は5:5、光陵は4:6:1。新城は内申と学力検査を完全に等分し、光陵は当日点に比重を寄せています。この比率差が、必要な内申の差になって現れます。

新城と光陵の比較(偏差値の順位と内申の要求水準が逆転する例)
項目新城光陵
偏差値6066
第1次選考の比率5:54:6:1
内申の目安(135点満点)120〜135110前後
当日点の目安350〜400400以上
中3の評定1つ当日点 約7.4点分当日点 約4.9点分
特色検査実施なし比率1

新城は内申と当日点だけで構成される1000点満点で、合格ラインの目安はS値840点。特色検査という加点要素がないぶん、内申と当日点のどちらかが欠けると穴を埋める手段がありません。「偏差値が下だから内申は少なくて済む」という読み方は、5:5の学校には通用しません。

逆に光陵は、当日点で400点以上を安定させられるなら内申110前後でも射程に入ります。内申が伸び悩んでいる生徒にとって、比率4:6は当日点で挽回できる余地が残されている設計です。同じ「上位校」でも、内申先行型の生徒と当日点先行型の生徒とで、向く学校が入れ替わります。


翠嵐と多摩──偏差値7の差があっても内申の要求は多摩が重い

もう一組、同じ逆転が起きている組み合わせがあります。偏差値74の翠嵐と偏差値67の多摩です。

横浜翠嵐と多摩の比較(内申の要求水準は多摩が重い)
項目横浜翠嵐多摩
偏差値7467
第1次選考の比率3:7:34:6:2
内申の目安(135点満点)126前後126〜135
当日点の目安450〜460400前後
中3の評定1つ当日点 約3.2点分当日点 約4.9点分
特色検査1点当日点 約2.1点分当日点 約1.7点分

翠嵐は内申比率を県内で最も低い水準の3に抑え、学力検査7と特色検査3に振り切った設計です。多摩は内申4を残しています。結果として、内申の要求水準は多摩のほうが上側に寄り、当日点の要求は翠嵐が50〜60点高くなります。偏差値7の差は、そのまま「必要な内申の差」にはなりません。翠嵐は当日点と特色検査で殴り合う学校、多摩は内申・当日点・特色検査の三つを均等に積む学校、という違いです。

ここまでの整理を、志望校を決める側の視点に置き換えると次のようになります。内申が強い生徒は、偏差値の階段を上から順に降りるのではなく、内申比率の高い学校を横に探すほうが合格可能性は上がります。当日点が強い生徒はその逆です。志望校の決め方そのものについては、志望校をいつ決めるべきかを学年別に整理した記事で決定の期限まで含めて扱っています。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

「志望校を1ランク下げましょう」という提案を、私はあまりしませんでした。下げても選抜比率が変われば、必要なものが軽くなるとは限らないからです。内申が足りない生徒に新城をすすめると、偏差値の階段は降りたのに内申の壁はむしろ高くなります。下げるのではなく、横に動かす。同じ偏差値帯の中で、その子の強みが効く比率の学校を探す。それが5校を横に並べて見えてくる、いちばん実務的な使い方です。


実質倍率が1点の重みを増幅する

神奈川公立上位5校の実質倍率は、令和8年度入試で横浜翠嵐1.93倍・多摩1.64倍・新城1.55倍・光陵1.34倍・横須賀1.23倍でした。倍率が高いほど合格ライン付近に受験生が密集するため、同じ1点でも合否を分ける確率が上がります。

1.93倍

横浜翠嵐(5校で最高)

1.55倍

新城(偏差値帯に対して高い)

1.23倍

横須賀(5校で最低)

実質倍率は、学力検査を受けた人数から受検後の取消者を除いた数を、合格者数で割った値です。県が公表している募集定員・受検者数・合格者数から算出しています。

5校の募集規模と競争率(令和8年度入学者選抜の実施結果に基づく)
学校募集定員受検者数合格者数実質倍率
横浜翠嵐359名714名359名1.93倍
多摩279名466名279名1.64倍
新城268名423名268名1.55倍
光陵279名377名279名1.34倍
横須賀279名346名279名1.23倍

この表で目を引くのは新城です。偏差値60という帯にありながら1.55倍は、偏差値66の光陵(1.34倍)と横須賀(1.23倍)を上回ります。川崎中南部で第一志望に選ばれることの多い学校で、合格ライン付近の密集度が高い。5:5という内申の重い設計と、この倍率が重なるため、新城は「内申で先行しておかないと当日に取り返しづらい」学校になります。

横須賀の1.23倍は5校で最も低い数字ですが、入りやすさを意味しません。3:7という当日点重視の設計で当日点350〜400点が求められる以上、要求される得点水準そのものは高いままです。倍率は「同じ得点帯にどれだけ人がいるか」を示す指標であって、「何点取れば受かるか」を示す指標ではない、という読み分けが必要です。


5校は「対策の型」で3つに分かれる

神奈川公立上位5校は、選抜比率から見ると内申先行型・当日点勝負型・三変数型の3つに分類できます。型が決まれば、学年ごとの時間配分と、塾に求めるべき機能が決まります。偏差値帯ではなく、この型で対策を組み立てるのが実務的です。

1

内申先行型|新城

5:5・特色検査なし。中3の評定1つが当日点約7.4点分と5校で最も重く、9教科すべてが等価。中2の定期テストから内申を積み上げ、当日点は350〜400点で揃える設計になります。特色検査対策の時間が不要なぶん、内申と5教科に集中できます。

2

当日点勝負型|光陵・横須賀

特色検査の比率は1で、勝負どころは学力検査。光陵は400点以上、横須賀は350〜400点が目安です。横須賀は英数国の内申2倍重点化があるため、内申対策も9教科均等ではなく3教科に寄せます。特色検査は形式に慣れて取りこぼさない水準で足ります。

3

三変数型|横浜翠嵐・多摩

内申・当日点・特色検査の三つが独立した得点源。特色検査だけでS値の17〜23%が動くため、専用の演習量が要ります。翠嵐は当日点450〜460点、多摩は内申126〜135と、それぞれ別の変数で高い水準を求められる点が共通しています。

この3分類は、塾に何を求めるかを決める段階でそのまま使えます。内申先行型なら中学校別の定期テスト対策が組み込まれているか、当日点勝負型なら県入試の共通問題に特化した演習量があるか、三変数型なら特色検査の講座と教材が体系として用意されているか。見るべき順番が型によって変わります。


5校の対策をどこで進めるか──臨海セミナーの教室網と合格実績

神奈川公立上位5校の対策を集団指導で進める場合、臨海セミナーは5校すべての通学圏に教室を持ち、2026年入試で5校合計510名の合格者数を公表している選択肢です。旧学区でいう横浜東部・横浜中部・横須賀三浦・川崎北部・川崎南部のすべてに教室網が及んでいるため、5校のどれを志望しても通学動線の中で選択肢になります。

臨海セミナーの5校別合格者数(2026年入試・同社公式発表に基づく)
学校合格者数公式発表の付記教室網(旧学区地域)

数値は臨海セミナーが公表している高校入試合格実績から、2026年8月時点で確認したものです。5校を横に並べたときに見えるのは、特定の1校に偏った実績ではなく、5校すべてで3桁または2桁後半の合格者を毎年出しているという分布です。前章の3分類でいえば、内申先行型の新城から三変数型の翠嵐まで、型の違う5校を同じ塾が並行して抱えていることになります。

型別に、臨海セミナーの環境が噛み合う理由も分かれます。内申先行型の新城には、中学校別の定期テスト対策が指導に組み込まれている点が効きます。当日点勝負型の光陵・横須賀には、神奈川県公立入試の共通問題に特化した演習体系が対応します。三変数型の翠嵐・多摩には、選抜制のESC難関高校受験科と特色検査対策の教材体系があり、同社の公表によれば独自作成の特色検査対策テキストは1,000ページを超え、2025年度のESC難関高校受験科における特色検査対策の総時間は100時間を上回りました。比率3の翠嵐で1点が当日点約2.1点分に化ける重みに対して、投入時間の面で見合う体系です。

一方で、正直に書いておくべき点もあります。集団授業のペースで進むため、基礎に大きな抜けがある状態から入ると消化不良を起こしやすいこと。ESC難関高校受験科は入塾テストによる選抜制で、希望すれば誰でも入れる枠組みではないこと。翠嵐・多摩を志望していて選抜クラスに入れなかった場合、一般クラスで特色検査の演習量を確保できるかは教室ごとに事情が異なります。入塾前の面談で、どのクラスに在籍する見込みか、そのクラスで志望校の特色検査を何時間扱うのかを具体的に確認してから判断してください。


湘南ゼミナール──神奈川公立入試に特化したカリキュラム

湘南ゼミナールは神奈川県の公立高校入試に特化したカリキュラムを持つ集団指導塾で、公立上位校への合格実績を継続的に公表しています。横浜・川崎・横須賀の各エリアに教室を展開しており、特色検査の共通問題について出題分析を公開するなど、重点校の特色検査にも対応しています。5校のうちどこを志望する場合でも、通える教室に該当校の志望者クラスが設置されているかを確認したうえで比較検討する候補になります。


ステップ──神奈川県内に絞った教室展開

ステップは神奈川県内に絞って教室を展開する集団指導塾で、公立上位校の合格実績を毎年公表しています。教室配置は県央・湘南エリアに厚みがあり、川崎北部・川崎南部・横須賀三浦の選択肢は相対的に限られます。通学圏に教室があるご家庭にとっては、教室単位の該当校実績を確認したうえで比較する候補になります。


個別指導という選択──弱い変数に時間を寄せる

集団のペースに乗りにくい、自分から質問を出すのが苦手というお子さまには、個別指導という選択肢があります。5校の入試は変数の数が学校ごとに違うため、内申・当日点・特色検査のどこが弱いかもご家庭ごとに異なります。弱い変数だけに時間を寄せられるカリキュラムの自由度は、この構造と相性が良い面があります。特色検査の記述問題を答案単位で添削してもらえる点も、三変数型の学校では価値があります。ただし当日点400点以上への引き上げには絶対的な演習量が必要で、個別指導のみでは演習時間と競争環境の両方が不足しがちです。集団を軸に弱点教科だけ個別を足す組み合わせが現実的な選択になります。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

塾を選ぶとき、合格実績の数字を「多いか少ないか」で見るご家庭が多いのですが、私は分布のほうを見ていました。1校に集中している塾は、その学校の対策には強い。5校に分散している塾は、志望校を途中で横に動かしても対応できる。中学2年の段階では志望校が動く前提で考えたほうが現実的なので、後者の価値は見た目の数字より大きいと思っています。教室に相談へ行くときは、合計の合格者数ではなく「その教室から、その学校に何名」を聞いてみてください。


5校のどれを第一志望に置くか──志望校×学年×性格の三軸で決める

5校のどれを第一志望に置くかは、偏差値だけでは決まりません。志望校レベル・学年・子どもの性格の三軸で判定すると、比率の相性と通塾開始時期が同時に決まります。内申が強い生徒には比率5:5の学校が、当日点が強い生徒には比率3:7の学校が噛み合います。

1

志望校レベルの大枠を決める

最難関公立(翠嵐)・難関公立(多摩・光陵)・中堅上位公立(横須賀・新城)のどこを目指すかを先に決めます。通塾開始の目安は最難関公立が小学5〜6年、難関公立が中学1年、中堅上位公立が中学1〜2年。大枠が決まると、この時期が自動的に決まります。

2

現在の学年で、動かせる変数を確認する

中2以降は調査書の評定が確定していきます。中1なら内申も当日点も両方伸ばせますが、中3の秋以降は内申が固定され、当日点と特色検査だけが残ります。動かせる変数が少ないほど、比率の相性で学校を選ぶ意味が大きくなります。

3

性格から通塾の形を決める

自走型なら演習量で引き上げる集団の環境が機能します。伴走型なら弱い変数に時間を寄せられる個別、あるいは集団と個別の併用が向きます。ここまでの三軸が揃うと、5校のうちどこを第一志望に置き、どの塾類型で進めるかが一本の線でつながります。

志望校が決まれば、塾は決まる。この順序は、5校を横断して見たときにいっそう明確になります。学校ごとに求められる変数が違う以上、志望校を決めないまま塾を選ぶと、その塾が得意な型に子どもの受験を合わせることになるからです。

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志望校レベルを5区分に分けて扱う考え方は、書籍でも一章を割いて説明しました。区分を作る目的は学校に序列をつけることではなく、同じ区分の中で「うちの子の強みが効く学校はどれか」を横に探せるようにすることです。本記事の比較は、その横方向の探し方を選抜比率で具体化したものにあたります。

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合格までにかかる塾代を志望校レベルから逆算したい場合は、志望校レベル別に高校受験の塾代を逆算した記事で開始時期別の総額まで整理しています。三軸の判定については藤原メソッド(志望校決定編)にまとめました。


よくある質問(FAQ)

Q神奈川の公立上位5校は、偏差値と選抜比率にどんな違いがありますか?

偏差値は横浜翠嵐74・多摩67・光陵66・横須賀66・新城60で、令和9年度選考基準の第1次選考の比率は翠嵐3:7:3、多摩4:6:2、光陵4:6:1、横須賀3:7:1(英数国の内申2倍重点化あり)、新城5:5です。内申の比率は新城が最も高く翠嵐が最も低いため、偏差値の順位と必要な内申の順位は一致しません。

Q内申が足りないとき、偏差値の低い学校に変えれば楽になりますか?

必ずしも楽になりません。偏差値60の新城は比率5:5で内申の目安が135点満点の120〜135、偏差値66の光陵は比率4:6:1で110前後です。偏差値の階段を降りても内申比率の高い学校に移れば、必要な内申はむしろ重くなります。内申が足りない場合は、偏差値を下げるより内申比率の低い学校を横に探すほうが合格可能性は上がります。

Q評定を1つ上げると、当日点では何点分の価値がありますか?

学校によって2倍以上違います。令和9年度選考基準で試算すると、中3の評定1つは新城が当日点約7.4点分、光陵と多摩が約4.9点分、横須賀の英数国が約4.8点分、横浜翠嵐が約3.2点分です。中2の評定1つはいずれもその半分になります。定期テスト対策に時間を割く価値は、志望校の内申比率で決まります。

Q特色検査の対策はどの学校でも同じだけ必要ですか?

必要量は比率で変わります。特色検査1点の当日点換算は横浜翠嵐が約2.1点分、多摩が約1.7点分、光陵と横須賀が約0.8〜0.7点分で、新城は特色検査を実施しません。翠嵐ではS値1300点のうち300点が特色検査で動くため専用の演習量が要りますが、比率1の光陵・横須賀は形式に慣れて取りこぼさない水準で足ります。

Q5校の実質倍率はどのくらいですか?

令和8年度入学者選抜では横浜翠嵐1.93倍・多摩1.64倍・新城1.55倍・光陵1.34倍・横須賀1.23倍でした。神奈川県が公表した受検者数と合格者数から算出した値です。偏差値60の新城が偏差値66の光陵・横須賀を上回っており、偏差値帯と競争率も一致しません。倍率は合格ライン付近の密集度を示す指標で、必要な得点水準そのものを示すものではありません。

Q5校のどれを志望しても通える塾はありますか?

臨海セミナーは旧学区でいう横浜東部・横浜中部・横須賀三浦・川崎北部・川崎南部のすべてに教室を持ち、2026年入試で横浜翠嵐144名・光陵105名・横須賀104名・多摩92名・新城65名の合格者数を公表しています。志望校が途中で動く可能性を考えるなら、1校に集中した実績よりも5校に分散した実績のほうが、対応の幅という意味で判断材料になります。


まとめ

神奈川公立上位5校を横に並べると、偏差値では見えない構造が現れます。合格に必要なものを決めているのは偏差値ではなく選抜比率で、その比率は学校ごとにまったく違います。最後に要点を整理します。

  • 比率が対策を決める。令和9年度選考基準の第1次選考は横浜翠嵐3:7:3、多摩4:6:2、光陵4:6:1、横須賀3:7:1(英数国2倍重点化)、新城5:5。S値満点も1300点から1000点まで違う
  • 評定1つの価値は2倍以上開く。中3の評定1つは新城が当日点約7.4点分、光陵・多摩が約4.9点分、横浜翠嵐が約3.2点分。定期テストに割く時間の価値は志望校で変わる
  • 偏差値の順位と内申の順位は一致しない。偏差値60の新城は内申120〜135、偏差値66の光陵は110前後。内申が足りないなら、偏差値を下げるのではなく内申比率の低い学校を横に探す
  • 倍率も偏差値帯と一致しない。令和8年度の実質倍率は横浜翠嵐1.93倍・多摩1.64倍・新城1.55倍・光陵1.34倍・横須賀1.23倍
  • 対策の型は3つ。内申先行型(新城)・当日点勝負型(光陵・横須賀)・三変数型(横浜翠嵐・多摩)。塾に求める機能は型ごとに変わる
  • 5校すべての通学圏をカバーする選択肢。臨海セミナーは2026年入試で横浜翠嵐144名・光陵105名・横須賀104名・多摩92名・新城65名、5校合計510名の合格者数を公表している

いま志望校が5校のどれかに定まっていなくても構いません。決めるべきなのは学校名より先に、自分の子が内申先行型なのか当日点先行型なのかという一点です。そこが見えれば、比率の相性で候補は自然に絞られます。志望校が決まれば、塾は決まる。その順序は、5校を並べて比べたときにこそ、はっきりと形になります。

この記事を書いた人

藤原 誠一

藤原 誠一

日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー/元塾教室長

神奈川県の大手学習塾で18年、教室長として進路指導を統括。「志望校が決まれば、塾は決まる」を軸に、志望校から逆算する塾選びと志望校決定の考え方を発信しています。

書籍『受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方』の表紙

著書

受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方

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著者プロフィール|note(藤原 誠一)

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