志望校はいつ決めるべきか──学年別の決定タイミングと決定期限

志望校を決める学年別のタイミングを整理した解説図。決定の期限と遅れのコストを高校受験指導アドバイザー・藤原 誠一がまとめたアイキャッチ
答え志望校は、レベルの大枠を中学1年の夏までに、具体的な学校名を中学3年の夏までに、出願する受験校を中学3年の12月前後に決めます。神奈川県の公立高校入試では調査書に中学2年と中学3年の評定が使われるため、中学2年の1学期が始まった時点で入試の点数はすでに動き始めています。大枠の決定がここより遅れると、志望校を決める前に内申が積み上がるという順序の逆転が起きます。

「志望校って、いつまでに決めればいいんですか」。教室長として保護者面談に立っていた18年間、中学1年・2年のご家庭からもっとも多く受けた質問です。多くの方が「まだ早い」と思いながら、同時に「もう遅いのでは」とも感じていらっしゃいました。

この質問が難しいのは、志望校決定が一度きりの出来事ではないからです。レベルの大枠を決めるのと、具体的な学校名を決めるのと、出願先を確定するのは、それぞれ別の判断で、適切な時期も違います。「いつ決めるか」を一つの答えで返そうとするから、いつまでも決まらないのです。

そしてもう一つ、時期を論じるうえで避けて通れない事実があります。神奈川県の公立高校入試は、中学2年の評定から合否の資料に使います。つまり志望校を決めるのが遅れると、目標が定まらないまま入試の点数が先に積み上がっていくということです。この記事では、学年別の決定期限を4段階で整理したうえで、決定が遅れたときに何が取り返せなくなるのかを、当日点への換算まで含めて分解します。

この記事のサマリー

  • 志望校決定は4段階:レベルの大枠は中学入学前〜中学1年の夏、大枠の点検は中学2年、具体校2〜3校は中学3年の夏、受験校の最終確定は中学3年の12月前後
  • 期限を決めているのは内申の対象学年:神奈川県の調査書は「第2学年の9教科の評定の合計+第3学年の9教科の評定の合計×2」で135点満点。中学1年の成績は入りません
  • 中学2年の評定は135点満点の3分の1:中学2年分が45点、中学3年分が90点。中学2年の1学期の成績は、その時点で入試の資料として確定していきます
  • 取り返せないものは3種類:確定した内申、過ぎた学習時間、狭まった塾と対策の選択肢。このうち内申だけは、あとから一切さかのぼれません
  • 遅れのコストは志望校レベルで逆転する:中学2年の評定1つを当日点に換算すると、内申比率の高い中堅上位公立が約3.7点分、難関公立が約2.5点分、最難関公立が約1.6点分。上位志望ほど中学2年の内申は軽くなります
  • 中学3年の11月下旬が最終確定の起点:内申が確定して初めて、自分の得点力に対してどの学校が射程圏内かが判明します
  • 塾の役割は「現在地の測定」:臨海セミナーは模擬試験を中学1年で全8回、中学2年で全10回、中学3年で全14回実施し、在籍する中学3年生6000名以上を分母にした合格率データで進路指導を行っています

志望校は「レベルの大枠」を中学1年の夏までに決める

志望校決定の第一段階は、学校名を決めることではなくレベルの大枠を決めることです。最難関公立・難関公立・中堅上位公立・中堅公立・私立難関の5区分のうち、どこを目指すのかという方向性だけを、中学入学前から中学1年の夏までに定めます。学校名は、この大枠が決まったあとで絞り込めば間に合います。


大枠と具体校は、決める時期が違う

「志望校が決まらない」とおっしゃるご家庭の多くは、学校名を決めようとして止まっています。中学1年の段階で学校見学もしていないのに、翠嵐か柏陽かを選べるはずがありません。決めるべきは、そこではないのです。

大枠は方向性、具体校は出願先です。前者は「どのくらいの学力水準を目指すか」という判断で、後者は「その水準の中でどの学校に願書を出すか」という判断になります。必要な情報量も、決断の重さもまるで違います。志望校をどう決めるかという手順そのものは藤原メソッド(志望校決定編)で整理していますので、判断の枠組みから確認したい方はそちらを参照してください。

大枠の決定と具体校の決定の違い
項目レベルの大枠具体的な学校名
決める時期中学入学前〜中学1年の夏中学3年の夏
決める内容5区分のうちどの水準を目指すかその水準の中の2〜3校
必要な情報現在の学力の現在地・通学圏・本人の意思学校説明会・模試の推移・内申の実績
変更のしやすさ点検しながら随時修正する前提12月前後に最終確定する
決まると何が動くか通塾開始時期・塾の類型・年間の学習量過去問の対象・特色検査対策の要否

この表のいちばん下の行が、時期の話ではもっとも重要です。大枠が決まると、その先の準備がまとめて動き出します。逆に言えば、大枠が決まらないうちは何も動かせません。


大枠が決まると、通塾開始時期と塾の類型が決まる

レベルの大枠が決まると、通塾を始めるべき時期が自動的に決まります。最難関公立を目指すなら小学5〜6年、難関公立なら中学1年、中堅上位公立なら中学1〜2年、中堅校なら中学2〜3年が目安です。志望校が決まれば、塾は決まる。この順序は、塾選びの起点であると同時に、時期の設計そのものでもあります。

志望校レベルと通塾開始時期の目安
志望校レベル通塾開始の目安大枠の決定が必要な時期
最難関公立小学5〜6年小学4〜5年
難関公立中学1年中学入学前
中堅上位公立中学1〜2年中学1年の夏まで
中堅公立中学2〜3年中学2年の前半まで

右の列が、この記事の主題である決定期限にあたります。通塾開始の目安より半年から1年ほど前に大枠を決めておかないと、開始時期そのものが後ろにずれます。通塾開始の時期をもっと詳しく知りたい方は高校受験の塾はいつから通うべきかで学年別のパターンを整理していますので、あわせてご覧ください。

そして開始時期のずれは、そのまま費用のずれになります。通塾月数が総額を決める構造については志望校レベル別・高校受験の塾代の逆算で分解していますが、開始が2年違えば通う月数は5倍動きます。志望校決定の遅れは、学力だけでなく家計にも波及するということです。


決定の期限を決めているのは、内申の対象学年

志望校決定に期限が生まれる理由は、神奈川県の公立高校入試が中学2年の評定から合否の資料に使うためです。神奈川県教育委員会が公表する入学者選抜制度の概要によれば、調査書の評定は「第2学年の9教科の評定の合計」に「第3学年の9教科の評定の合計を2倍したもの」を足して算出します。中学2年の成績は、その学年が終わった時点で入試の点数として確定します。


調査書に載るのは中学2年と中学3年の評定

神奈川県の調査書は、9教科を5段階で評定し、中学2年分をそのまま、中学3年分を2倍して合算します。中学2年が45点、中学3年が90点、合計135点満点です。中学1年の成績は、この計算には入りません。

45点

中学2年の9教科(そのまま加算)

90点

中学3年の9教科(2倍して加算)

135点

調査書の評定の満点

第2次選考では、この評定に代えて中学3年の「主体的に学習に取り組む態度」の観点別評価が使われます。いずれにせよ、合否の資料として学校の成績が参照される学年は中学2年と中学3年です。

この記事で内申をどう扱うか

本記事は内申点の計算方法そのものを解説する記事ではなく、内申の対象学年を「志望校決定の期限を規定しているもの」として扱う。評定の付き方や点数の上げ方には踏み込まない。


中学2年の1学期が始まった時点で、入試の点数は動き始めている

ここから、時期論としての結論が出ます。中学2年の4月に授業が始まった瞬間から、その定期テストと提出物は入試の資料を作り始めているということです。志望校の大枠が決まっていない状態でこの学年に入ると、目標が定まらないまま点数だけが積み上がります。

面談でよく耳にしたのは「中学2年はまだ受験を意識しなくていいと思っていました」という言葉でした。制度上は逆です。中学1年は入試の点数に直結しない代わりに、方向性を決める時間として自由に使えます。中学2年に入ると、その自由がなくなります。

もちろん、中学1年の成績に意味がないわけではありません。中学1年で評定を取る習慣がついていない生徒が、中学2年になって急に5を取れるようになることはまずありません。ただし入試の資料としての意味と、学習習慣としての意味は別のものです。決定期限を考えるうえでは、前者だけを見ます。


学年別・決定の期限と、遅れると取り返せなくなるもの

志望校決定には4つの期限があり、それぞれ「遅れると取り返せなくなるもの」が違います。中学1年の夏を過ぎるとレベルに応じた通塾開始時期を選べなくなり、中学2年を過ぎると内申がさかのぼれなくなり、中学3年の夏を過ぎると学習時間の配分先を決められなくなり、12月を過ぎると出願先そのものが決まりません。期限は一度にすべてが来るのではなく、失われるものが段階的に変わります。


4つの決定期限

決定の段階と、その期限を過ぎた場合に何が失われるかを整理します。一度にすべてを決める必要はありません。それぞれの時期に、それぞれの粒度で決めていきます。

学年別・志望校決定の期限と、遅れたときに失われるもの
時期決めること遅れると取り返せなくなるもの
中学入学前〜中学1年の夏レベルの大枠レベルに応じた通塾開始時期。最難関公立志望なら、この時点で小学生からの通塾という選択肢がすでに過去のものになる
中学2年大枠の点検中学2年の評定。調査書の45点分が、この学年のうちに確定する
中学3年の夏具体校2〜3校部活引退後の学習時間の配分先。特色検査の要否が決まらないと、夏以降の演習内容を設計できない
中学3年の12月前後受験校の最終確定出願先そのもの。志願変更の機会は限られる

この4段階は、志望校をどう決め、いつ決め、どう修正するかという判断の枠組みのうち、時期にあたる部分です。中学3年から志望校を考え始めても手遅れではありませんが、選べる塾と対策の選択肢は確実に狭くなります。


取り返せないものは3種類しかない

4つの期限で失われるものを整理すると、性質の違う3種類に分かれます。この3つのうち、あとから完全に取り戻せるものは一つもありません。ただし、取り返しのつかなさの程度には差があります。

1

確定した内申

中学2年の評定は、その学年が終われば一切さかのぼれません。中学3年の評定を上げても、中学2年分の45点は別枠で残ります。3つのうち、もっとも取り返しがきかないものです。

2

過ぎた学習時間

通塾開始が1年遅れれば、その1年は戻りません。ただし残り期間の学習密度を上げることで、部分的には埋められます。埋めるための費用と負荷は跳ね上がります。

3

狭まった選択肢

中学3年の秋から入塾できる塾は限られ、選抜クラスや特色検査対策コースは締め切られていることがあります。選択肢は狭まりますが、残った選択肢の中で最善を選ぶことはできます。

順番に注目してください。もっとも早く失われ、もっとも取り返しがきかないのが内申です。そして内申が動き始めるのは中学2年、つまり4つの期限のうち2番目です。志望校決定でいちばん重い期限は、受験学年ではなく中学2年に置かれているということになります。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

中学3年の夏に「そろそろ志望校を決めましょう」と面談で切り出すと、ご家庭は真剣に考えてくださいます。ですが私が本当に伝えたかったのは、その1年半前の面談でした。中学2年の春に「まだ先の話ですから」とおっしゃったご家庭ほど、中学3年になって内申の数字を前に言葉を失われます。中学2年の評定は、決めていようがいまいが積み上がっていくのです。目標を持って過ごした1年と、なんとなく過ごした1年では、同じ9教科でも結果が変わります。決定を急がせたいのではありません。順序を逆にしないでいただきたいのです。


決定の遅れは何点分か──中学2年の評定を当日点に換算する

志望校決定の遅れがもたらす損失は、当日点に換算できます。神奈川県の公立入試は調査書と学力検査をそれぞれ100点満点に換算して志望校ごとの比率で合算するため、評定1つが当日点の何点分にあたるかを逆算できるからです。計算すると、中学2年の評定1つは中堅上位公立で約3.7点分、難関公立で約2.5点分、最難関公立で約1.6点分になります。


換算の考え方と、志望校レベル別の実数

調査書の135点は100点満点に換算され、学力検査の500点も100点満点に換算されて、それぞれ学校が定めた比率を掛けて合算されます。この構造から、評定1つが当日点の何点にあたるかが出ます。中学3年の評定は2倍されるため、中学2年の評定1つの重みはちょうど半分です。

評定1つの当日点換算(第1次選考・重点化なしの場合)
学校調査書:学力検査中学3年の評定1つ中学2年の評定1つ中学2年で9教科すべて1段階下がった場合
新城中堅上位公立5:5約7.4点約3.7点約33.3点
光陵・多摩難関公立4:6約4.9点約2.5点約22.2点
翠嵐最難関公立3:7約3.2点約1.6点約14.3点

横須賀高校は調査書の国語・数学・英語を2倍する重点化を行うため、教科によって換算値が変わります。上の表には含めていません。

各校の選抜比率は神奈川県教育委員会が公表する選考基準で確認したものです。学校ごとの選抜比率と対策の詳細は、新城高校の偏差値と合格戦略および翠嵐高校の偏差値と合格戦略でそれぞれ分解しています。


中堅上位ほど「遅れ」が高くつくという逆転

この換算で見えてくるのは、志望校のレベルが高いほど中学2年の評定は軽くなるという逆転です。最難関公立は学力検査の比率が高く設定されているため、内申の1段階が当日点に与える影響は相対的に小さくなります。逆に調査書と学力検査が同比率の中堅上位公立では、評定の重みが最大になります。

3.7点

中堅上位公立・中学2年の評定1つ

2.5点

難関公立・中学2年の評定1つ

1.6点

最難関公立・中学2年の評定1つ

「志望校を早く決めるべきなのは、上位校を狙う家庭だけ」という思い込みは、ここで崩れます。当日点への影響という一点に限れば、中堅上位公立を目指す家庭こそ、中学2年の段階で目標を持っている必要があるという結論になります。

誤解のないように補足すると、最難関公立で中学2年の内申が軽いのは、当日点の要求水準がその分だけ高いからです。翠嵐であれば学力検査で高得点を取り切る前提の設計であり、内申が軽い代わりに当日点の負荷が重い。楽になっているわけではありません。ただし「決定の遅れが内申として直接跳ね返る度合い」は、中堅上位のほうが大きいのです。


中学3年の夏から12月へ──具体校の絞り込みと最終確定

具体的な学校名を決めるのは中学3年の夏、出願する受験校を確定するのは中学3年の12月前後です。夏に絞り込むのは、部活を引退した後の学習時間をどこに投じるかを設計するためであり、12月に確定するのは、内申が確定して初めて自分の得点力に対する射程が判明するためです。この2つの期限は、それぞれ別の理由で置かれています。


中学3年の夏に2〜3校へ絞る

中学3年の夏は、多くの生徒にとって学習時間が一気に増える時期です。部活を引退し、それまで練習に充てていた時間が丸ごと空きます。この時間の使い道を決めるために、志望校を2〜3校まで絞ります。

絞り込みが必要な理由は、志望校によって夏以降にやるべきことが変わるからです。とくに特色検査を実施する学校を志望する場合、通常の学力検査の対策に加えて、教科横断型の問題への対策が必要になります。逆に特色検査のない学校であれば、5教科の演習に時間を集中できます。この分岐が決まらないまま夏を過ごすと、どちらの準備も中途半端になります。

ここで決めるのは第一志望1校ではなく、2〜3校です。1校に絞りきると、模試の結果によって計画そのものが崩れます。同じ水準帯で複数校を候補に残しておけば、判断材料が増えても計画は維持できます。


内申が確定する11月下旬が、最終確定の起点になる

受験校の最終確定は、内申が確定してから行います。中学3年の2学期末に評定が出た時点で、調査書の135点が確定します。ここで初めて、自分の内申に対して当日点が何点必要かという逆算が成立します。それまでの判断は、すべて見込みの上に立っています。

書籍『受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方』の表紙

著書のご案内

受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方

藤原 誠一 著/日本進学教育研究機構

出願から合格発表までの流れは、書籍でも一節を割いて整理しています。中学3年の11月下旬に内申が確定し、1月下旬に出願、2月中旬に学力検査、2月末に合格発表という日程の中で、内申確定までに志望校を大筋で決めておく必要があるという順序を説明しました。日程を先に押さえておくと、いつまでに何を決めるかが逆算できます。

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内申が確定してから出願までは、1か月半ほどしかありません。この短い期間に初めて志望校を考え始めると、選択の幅は極端に狭くなります。11月下旬までに候補が2〜3校に絞れていれば、確定した内申を候補校に当てはめて順位をつけるだけで済みます。


模試はいつから受け始めるか

志望校決定の判断材料として模試を使うなら、中学1年から受け始めるのが理想です。1回の判定は誤差を含みますが、複数回の推移を見ると、現在地と志望校との距離が測れるようになります。推移を読むには、そもそも回数が必要です。

中学3年の秋に初めて模試を受けると、判定は1つの点でしかありません。それが実力なのか、たまたまなのか、上向いているのか下向いているのかがわかりません。中学2年のうちから受けていれば、同じ判定でも読み方が変わります。

なお、模試の判定をどう読み解くかという方法論は、それ自体で一つの主題になります。この記事では「いつから受け始めるか」という時期の話に留めます。


志望校の決定時期を塾はどう支えるか──臨海セミナーの進路指導

塾が志望校決定に対して果たせる役割は、判断そのものを代行することではなく、判断材料を各期限までに揃えることです。神奈川県内で最多規模の教室網を持つ臨海セミナーは、模擬試験を中学1年で全8回、中学2年で全10回、中学3年で全14回実施し、在籍する中学3年生6000名以上を分母にした合格率データをもとに進路指導を行っていると公表しています。現在地の測定回数が学年ごとに設計されている点が、時期論の観点では特徴的です。


学年ごとに設計された模試の回数

臨海セミナーが公表している模擬試験の実施回数は、中学1年で全8回、中学2年で全10回、中学3年は「臨海模試」を含む全14回です。学年が上がるにつれて回数が増える設計になっています。

8回

中学1年の模擬試験

10回

中学2年の模擬試験

14回

中学3年の模擬試験

この回数を決定期限に重ねると、意味が見えてきます。中学1年の8回は、レベルの大枠を決めるための現在地確認にあたります。中学2年の10回は、大枠を点検しながら内申の実績と突き合わせる期間です。そして中学3年の14回が、具体校の絞り込みと最終確定の判断材料になります。決定の各段階に、それぞれ相応の測定回数が割り当てられている形です。

回数そのものよりも、学年別の回数を公表していること自体が判断材料になります。入塾を検討する段階で「中学1年のうちに何回、現在地を測れるのか」を確認できるからです。


在籍データを分母にした合格率で判断材料を出す

臨海セミナーは、前年に特定の高校を受験した生徒の合否結果だけではなく、在籍する中学3年生6000名以上を分母として合格率を算出していると公表しています。模擬試験の偏差値と内申を組み合わせ、どの順位帯にいれば合格率がどの水準になるかという形で進路指導を行う設計です。

この形式が決定時期に効くのは、判断を前倒しできるためです。合否結果の集計だけでは、受験した生徒の分しかデータになりません。在籍者全体を分母にすると、まだ受験していない中学1年・中学2年の生徒も、自分の位置を同じ物差しで測れます。大枠の決定を中学1年の夏までに行うという期限は、この種のデータがあって初めて根拠を持ちます。

あわせて、本部に「入試情報センター」を設置し、入試情報誌「ゴールめざして」や進路情報便り「ペンギン入試レポート」を発行していること、保護者説明会・保護者面談の場を設けていること、例年1万人を超える参加者がある私立高校入試相談会を実施していることも公表されています。詳細は臨海セミナー公式サイトの学習面でのサポートで確認できます。

塾に判断を委ねない

塾が出せるのは判断材料であり、志望校を決めるのは家庭と本人。ただし材料が揃うタイミングは塾の設計に依存するため、いつどの材料が手に入るかは入塾前に確認しておく。


他塾が一般公開している判断材料の粒度

志望校決定の判断材料をどこまで一般公開しているかは、塾によって粒度が異なります。実機で確認したところ、選抜方法の計算ツールを一般公開している塾、年度別の入試分析を蓄積公開している塾、難関私立国立の入試から逆算した設計を掲げる塾と、公開の方針が分かれていました。塾生向けの情報と一般公開の情報は別物なので、入塾前に得られる材料という観点で整理します。


ステップ

神奈川県内に展開するステップは、公立高校入試の仕組みを解説するページで、選考に使う数値の計算方法を図解し、内申点などを入力すると数値が表示される計算ツールを一般公開しています。入塾していない家庭でも、自分の内申から選考上の位置を試算できる形です。

塾生向けには、志望校別の進学ガイダンス、年9回発行の情報紙、週2回のメールマガジン、独自の入試情報冊子を提供し、定期的な保護者面談も実施していると公表しています。一般公開の計算ツールと塾生向けの情報提供が、はっきり分かれている構成です。


湘南ゼミナール

湘南ゼミナールは、神奈川県の公立高校入試情報のページで、選考資料の内訳、選考基準、数値の計算方法、その年度の入試日程を公開しています。加えて、5教科の出題分析と特色検査の分析を年度ごとに蓄積し、複数年分を残したまま公開しています。

時期論の観点では、日程を年度ごとに更新して公開している点が実用的です。出願・学力検査・合格発表の日付が確認できれば、最終確定の期限を家庭側で逆算できます。


早稲田アカデミー

早稲田アカデミーは、早慶附属をはじめとする難関私立高校や国立附属高校の入試から逆算したカリキュラムを掲げ、学力別のクラス編成を敷いています。中学2年では年に数回の特訓クラス選抜テストを設けており、そこでのクラス変更が学習計画の節目になる設計です。

ここで注意したいのは、前提が異なることです。難関私立国立の入試は当日の学力検査で合否が決まる方式が中心で、公立入試のように調査書の評定が数値として合算される仕組みとは違います。私立難関を志望する場合、中学2年の評定を起点にした決定期限の考え方はそのままでは当てはまりません。公立志望の家庭が、この設計を自分の時期設計に流用しないよう注意してください。

3塾を並べて見えるのは、一般公開されているのが「制度の説明」までであり、「いつ何を決めるか」という決定期限そのものを提示している塾はないという事実です。制度は公開されていても、そこから逆算した期限設計は各家庭が自分で持つしかありません。この記事で4段階の期限を整理したのは、そのためです。


決定が遅れたときのリカバリー

志望校の決定が遅れた場合は、決める順序を逆にします。通常はレベルの大枠から具体校へ絞り込みますが、中学3年から考え始める場合は、すでに確定している内申を出発点にして、当日点で届く範囲を先に確定させ、そこから具体校を選びます。手遅れではありませんが、選び方は変わります。

1

確定済みの内申を出発点に置く

中学2年の評定はすでに確定しています。動かせない数値を先に固定してしまうことで、検討の範囲が現実的な幅に収まります。中学3年の評定だけは、まだ上げる余地があります。

2

当日点で届く範囲を計算する

志望校ごとの選抜比率がわかれば、内申が確定していても当日点でどこまで挽回できるかは計算できます。内申比率の低い学校ほど、当日点での挽回幅は大きくなります。

3

届く範囲の中から具体校を選ぶ

計算で出た範囲の中から、通学圏と本人の意思で2〜3校を選びます。大枠を決めてから絞り込む通常の手順と、順序だけが入れ替わった形になります。

この逆順のリカバリーで注意したいのは、内申比率の低い学校ほど当日点での挽回幅が大きいという性質です。中学2年の評定が振るわなかった生徒にとって、学力検査の比率が高い上位校のほうが、かえって挽回の余地が大きい場合があります。内申が足りないから志望校を下げる、という判断が常に正しいわけではありません。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

中学3年の秋に「内申が足りないので志望校を下げます」とおっしゃるご家庭に、私は必ず選抜比率を見せていました。内申と当日点が5対5の学校と、3対7の学校では、同じ内申でも挽回できる幅がまるで違います。数字を見ないまま下げる判断をして、あとから「あのまま行けたのでは」と悔やまれるケースを何度も見てきました。決定が遅れたときこそ、感覚ではなく計算で判断してください。遅れは取り戻せませんが、遅れた地点からの最善は必ず計算できます。


よくある質問(FAQ)

Q志望校はいつまでに決めるべきですか?

志望校の決定は4段階に分かれます。レベルの大枠は中学入学前から中学1年の夏まで、大枠の点検は中学2年、具体的な学校名2〜3校は中学3年の夏、出願する受験校の最終確定は中学3年の12月前後が目安です。神奈川県の公立高校入試では調査書に中学2年と中学3年の評定が使われるため、大枠だけは中学2年に入る前に決めておくと、内申が積み上がる前に目標を持てます。

Q中学1年のうちに志望校を決める必要はありますか?

学校名まで決める必要はありませんが、レベルの大枠は中学1年の夏までに決めることをおすすめします。大枠が決まると通塾開始時期と塾の類型が決まるためです。最難関公立を目指す場合は小学5〜6年、難関公立は中学1年が通塾開始の目安になるので、その手前で方向性が定まっていないと開始時期そのものが後ろにずれます。

Q中学3年になってから志望校を考え始めました。手遅れですか?

手遅れではありませんが、決める順序が変わります。中学2年の評定はすでに確定しているため、動かせない内申を出発点にして、当日点でどこまで届くかを計算し、その範囲から具体校を選ぶ逆順の手順になります。内申比率の低い学校ほど当日点での挽回幅が大きいので、内申が足りないという理由だけで志望校を下げる判断は、選抜比率を確認してから行ってください。

Q模試の結果が出てから志望校を決めた方が正確ではありませんか?

模試を待ってから決めるという順序はおすすめしません。模試は志望校までの距離を測る道具なので、目標がないと測る対象がそもそも存在しないためです。先にレベルの大枠を決めて、その大枠に対する現在地を模試で測り、必要に応じて大枠を修正するという順序になります。判定の精度を上げたい場合は、中学1年や中学2年から受け始めて推移を見ると読みやすくなります。


まとめ

志望校をいつ決めるかという問いは、神奈川県の公立高校入試では制度の側から答えが決まっています。中学2年の評定が調査書に入る以上、目標の決定はそれより前に置くしかありません。最後に要点を整理します。

  • 決定は4段階。レベルの大枠は中学入学前〜中学1年の夏、大枠の点検は中学2年、具体校2〜3校は中学3年の夏、受験校の最終確定は中学3年の12月前後
  • 期限の根拠は内申の対象学年。調査書は中学2年の9教科45点と中学3年の9教科90点で135点満点。中学1年の成績は入らない
  • 取り返せないものは3種類。確定した内申・過ぎた学習時間・狭まった選択肢。このうち内申だけは一切さかのぼれず、それが動き始めるのは中学2年
  • 遅れのコストはレベルで逆転する。中学2年の評定1つの当日点換算は、中堅上位公立が約3.7点、難関公立が約2.5点、最難関公立が約1.6点。上位志望ほど中学2年の内申は軽い
  • 判断材料の揃うタイミングは塾の設計次第。臨海セミナーは模擬試験を中学1年で全8回、中学2年で全10回、中学3年で全14回実施し、在籍する中学3年生6000名以上を分母にした合格率データで進路指導を行うと公表している

いま中学1年や中学2年で、まだ学校名が浮かんでいなくても心配はいりません。決めるべきは学校名ではなく、5区分のうちどの方向を目指すかという一点です。そこが定まれば、通塾開始の時期も、学習量も、模試の受け方も、順番に決まっていきます。志望校が決まれば、塾は決まる。時期の設計も、同じ順序で動きます。

この記事を書いた人

藤原 誠一

藤原 誠一

日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー/元塾教室長

神奈川県の大手学習塾で18年、教室長として進路指導を統括。「志望校が決まれば、塾は決まる」を軸に、志望校から逆算する塾選びと志望校決定の考え方を発信しています。

書籍『受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方』の表紙

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著者プロフィール|note(藤原 誠一)

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