塾選びの相談を受けるとき、私が最初に確認するのは「志望校はどこですか」という一点です。神奈川県の大手学習塾で18年間、教室長として進路指導を統括してきた経験から言えるのは、塾選びの失敗の多くが、塾を比較する段階ではなく、その手前の「志望校が決まっていない」段階で起きているということです。
本ページでは、藤原メソッドの起点にあたる「志望校決定編」を解説します。志望校をどう決めるか、いつ決めるか、そして決めた後にどう修正するか。この3つの問いに、現場で使ってきた判断基準で答えていきます。
目次
藤原メソッド(志望校決定編)とは何か
藤原メソッド(志望校決定編)とは、志望校の「決め方・決める時期・修正の基準」を体系化した、志望校決定のための判断フレームです。志望校×学年×子どもの性格の三軸で推奨塾類型を判定する藤原メソッドの、第一の軸である「志望校」を確定させるための手順にあたります。
藤原メソッドの全体像は、三軸判定マトリクスと、実際の塾に当てはめる逆算の8ステップで構成されます。この全体像は藤原メソッド完全解説(高校受験の塾選び徹底ガイド)で詳しく解説しています。本ページが扱うのは、その全体像の手前にある「そもそも志望校をどう決めるか」です。
POINT
三軸判定も逆算の8ステップも、志望校の大枠が決まっていなければ動き出せません。志望校決定編は、藤原メソッド全体を機能させるための起点です。
なぜ「塾選び」より先に「志望校」なのか
藤原メソッドの中核メッセージは「志望校が決まれば、塾は決まる」です。塾を先に選んでから志望校を考えるのではなく、志望校を決めることが塾選びの前提であるという順序を示しています。理由は3つあります。
第一に、塾の評価軸が志望校で変わるからです。最難関公立を目指すなら選抜制の難関コースの有無が、中堅上位公立を目指すなら内申対策と地域情報の厚みが、それぞれ評価の中心になります。志望校が決まっていない状態での塾比較は、採点基準のない採点と同じです。
第二に、通塾開始時期が志望校から逆算されるからです。目指すレベルによって、間に合う開始時期は異なります。志望校が曖昧なままだと、開始時期の判断も先送りになりがちです。
第三に、順序を逆にすると塾に合わせて志望校が決まってしまうからです。先に入った塾のコース編成や実績の厚い学校に、志望校のほうが引き寄せられていく。現場で何度も見てきた構図です。主導権をご家庭の側に残すためにも、志望校が先です。
志望校をどう決めるか ── レベルの大枠から具体校へ
志望校決定は「具体的な1校を選ぶこと」から始めません。まずレベルの大枠を決め、その後に具体校へ絞り込む二段階で進めます。
まず「レベルの大枠」を決める
神奈川県の高校受験では、志望校のレベルを次の5区分で捉えます。
| レベル | 学校の例 | 入試の性格 |
|---|---|---|
| 最難関公立 | 翠嵐・湘南・柏陽 | 学力検査と特色検査の二重対策が必須。県内最上位の競争 |
| 難関公立 | 希望ヶ丘・厚木・光陵・多摩 | 学力検査重視。学校により特色検査あり |
| 中堅上位公立 | 市ヶ尾・新城・横須賀・平沼 | 内申と当日点のバランス型。地域性が強い |
| 中堅公立 | 各地域の中堅校 | 内申の比重が相対的に高い |
| 私立難関 | 難関私立・国立 | 学校別の出題傾向への特化対策が必要 |
この段階で決めるのは「うちはどの区分を目指すのか」というレベル感の方向性だけです。具体的な学校名はまだ不要です。
大枠を決める3つの材料
レベルの大枠は、次の3つの材料を突き合わせて決めます。
- 現在の学力の現在地:直近の内申と模試の結果。希望ではなく数字で現在地を測ります
- 通学圏:3年間、毎日通える範囲か。片道1時間を超える通学は学習時間を確実に削ります
- 本人の意思:保護者の希望だけで決めた志望校は、受験期の失速につながりやすい。本人が「行きたい」と言える方向性かを確認します
3つのうち、最も軽視されがちで、最も重要なのが本人の意思です。現在地とのギャップが大きくても、本人の意思が固い志望校は、そのギャップ自体が学習の推進力になります。
具体校への絞り込み
大枠が決まったら、その区分の中から具体校を2〜3校に絞り込みます。判断材料は、募集要項の選抜比率(内申・当日点・特色検査の配点)、学校説明会や文化祭で見た校風、そして通ってからの3年間を具体的に想像できるかどうかです。説明会では校舎の新しさより、在校生の表情や廊下の空気を見てください。3年間過ごすのは建物ではなく、その空気の中です。
志望校はいつ決めるか ── 学年別の決定タイミング
志望校決定には「この時期までにここまで決める」という段階があります。一度にすべてを決める必要はありません。
| 時期 | 決めること | ポイント |
|---|---|---|
| 中学入学前〜中1の夏 | レベルの大枠 | 通塾開始時期の逆算に必要な最初の判断。方向性だけでよい |
| 中2 | 大枠の点検 | 内申の実績が揃い始める。大枠と現在地のズレを確認する |
| 中3の夏 | 具体校2〜3校 | 部活引退後の学習量を設計するために、目標を具体化する |
| 中3の12月前後 | 受験校の最終確定 | 直近の模試と内申の確定値をもとに、出願校を決める |
最難関公立を視野に入れる場合は、通塾開始が小学生からになることもあるため、大枠の判断はさらに前倒しになります。逆に、中3から志望校を考え始めた場合でも手遅れではありませんが、選べる塾と対策の選択肢は確実に狭くなります。
志望校をどう修正するか ── 模試判定と見直しの基準
志望校は一度決めたら動かせないものではありません。むしろ、模試の結果を材料に点検と修正を繰り返すことを前提に設計します。
模試判定は「距離の測定値」として読む
模試の判定は合否の予言ではなく、志望校までの距離の測定値です。同じB判定でも、上昇傾向のB判定と下降傾向のB判定では意味が異なります。1回の判定に一喜一憂せず、複数回の推移で距離の変化を読むのが基本です。
志望校を下げる判断・上げる判断
「志望校を下げるか」という相談は12月に集中します。しかし判断材料は夏の模試にすでに出ています。修正の判断で大切なのは、感情が固まる直前期ではなく、材料が出た時点で親子が数字を直視することです。下げる判断は、内申の確定値と模試の推移という2つの数字が揃ったときに、本人の意思と併せて行います。逆に、推移が明確に上向きなら、上のレベルへ志望校を上げ直す判断もあります。
POINT
修正は失敗ではありません。点検と修正を織り込んだ志望校決定こそが、直前期の迷走を防ぎます。
志望校が決まったら ── 塾選びへの接続
志望校の大枠が決まれば、藤原メソッドは次の段階に進みます。志望校×学年×子どもの性格の三軸判定で推奨塾類型を確認し、逆算の8ステップ(志望校の大枠を決める → 通塾開始時期を決める → 三軸判定でマトリクス上の位置を確認 → 推奨塾類型に該当する塾を3〜5校リストアップ → パンフレット・ウェブサイトで一次比較 → 説明会・体験授業で二次比較 → 最終判断 → 入塾3か月後に検証)で実際の塾に当てはめていきます。
三軸判定マトリクスと8ステップの詳しい使い方は、藤原メソッド完全解説をご覧ください。本ページの「志望校決定編」が起点、完全解説の「塾選び」が本体という関係です。

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受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方
本ページで解説した志望校決定の考え方は、書籍の第15章「志望校から逆算する塾選び ── 最終判断のフレームワーク」で、三軸判定マトリクス・最終決定フローチャートとともに体系的に解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q藤原メソッド(志望校決定編)と藤原メソッドの違いは何ですか?
藤原メソッド(志望校決定編)は、藤原メソッド全体のうち起点となる「志望校の決め方・決める時期・修正の基準」を体系化した部分です。志望校×学年×子どもの性格の三軸判定と逆算の8ステップを含む全体像は、藤原メソッド完全解説で扱っています。
Q志望校がまったく決まっていません。何から始めればよいですか?
具体的な学校名ではなく、レベルの大枠(最難関公立・難関公立・中堅上位公立・中堅公立・私立難関)から決めます。現在の学力の現在地・通学圏・本人の意思の3つの材料を突き合わせれば、方向性は絞り込めます。
Q志望校は一度決めたら変えてはいけませんか?
変えて構いません。志望校決定は、模試の推移と内申の確定値を材料に点検と修正を繰り返すことを前提に設計します。修正は失敗ではなく、直前期の迷走を防ぐための仕組みです。
Q塾に入ってから志望校を決めてもよいですか?
レベルの大枠だけは先に決めることをおすすめします。志望校が決まっていないと塾の評価軸が定まらず、先に入った塾のコース編成に志望校が引き寄せられる逆転が起きやすいためです。大枠さえあれば、塾選びは機能し始めます。
まとめ
藤原メソッド(志望校決定編)の要点を整理します。
- 塾選びの前提は志望校。「志望校が決まれば、塾は決まる」が藤原メソッドの中核です
- 志望校決定は「レベルの大枠 → 具体校」の二段階。大枠は現在地・通学圏・本人の意思の3材料で決めます
- 大枠は中1の夏まで、具体校は中3の夏、最終確定は中3の12月前後が目安です
- 模試判定は距離の測定値として読み、材料が出た時点で点検・修正を行います
志望校の大枠が決まったら、三軸判定と逆算の8ステップで塾選びへ進んでください。当サイトの各記事では、志望校別の対策と塾選びを、この志望校決定編を起点に解説していきます。